「未来の教育を語る」第5回のゲストは、みんなの劇場保育園の園長である戸田弟比古先生です!
前編では、現代の保育園の役割や保育園の方針について語り合います。
㈱ビッグトゥリー
代表取締役 髙柳 希
ディスカッション好きが高じて大学時代に起業。ディスカッション・コミュニケーション専門の教育会社として現在に至る。
社会福祉法人音色会 みんなの劇場保育園
理事長/園長 戸田 弟比古
2012年「みんなの劇場保育園」を開園し、現在2園を運営。子ども達や保育士と関わる傍ら音楽業界等の経歴を保育に活かすユニークな園長。
ーーまずはお二人の自己紹介をお願いします。
高柳:小学生から高校生を対象にしたディスカッションスクールDコートを運営しています。
保育園は私にとっては未知の分野なので今回の対談が楽しみです!
戸田:私は福岡市内で「みんなの劇場」という保育園の園長をしています。
そうですね、あらためて高柳さんとこのように話す機会もなかったですし。
高柳さんとの出会いは保育園スタートより前、今から約10年前ですよね?
高柳:NPO活動を通じて知り合いましたね。戸田さんは東京本部、私は福岡支局の一員で、当時は別々に活動をしていましたね。
戸田:高柳さんは当時、中高生親子の討論会を企画していましたね。高柳さんとの関わりが増えたのは私が福岡で保育園を始めてからですね。開園時はスタッフも少なくて、朝から高柳さんには園児と遊んでもらっていました(笑)
高柳:懐かしい!そのときは何かお手伝いできればという思いでした。
「主体性」を大切にした保育園
高柳:「みんなの劇場保育園」の名前の由来は何でしょう?戸田さんがミュージカルプロデューサーだからこそ、この名前なのかなと思っているのですが。
戸田:はい、実はそういった仕事もやっています。でも、ミュージカルというより、「一人ひとりが主人公で、子どもたちは主人公」という意味です。そして職員は子ども達を輝かせる「裏方」でありたいという意味ですよ。
高柳:とっても素敵な意味ですね!園の中にはやはり音楽や劇に関わる特色もあるんですか?
戸田:そうですね、先ほども言ったようにミュージカルに直結しているわけではありません。ただ、ジャズダンスを園のプログラムに入れています。これは体操教室のように楽しみながら全身運動をできるということで取り入れています。
高柳:楽しそうですね!戸田さんが考える保育方針も聞きたいです。
戸田:「みんなの劇場」なのでみんながつくっていくということが大前提です。
そのなかで、私は「主体性」をとても重要なキーワードとして持っています。子ども達の主体性はもちろん、そのためにもまずは先生たちに「主体性」を持ってほしいと考えています。
高柳:確かに、子どもたちに伝えるには、まず大人も意識することは大切ですよね。
戸田:保育園を始めるとき、先生たちに「どんな保育園ですか?」と尋ねられました。
私は「あなたがどんな保育園にしたいかまず考えてほしい」と伝えています。難しい話ではありません。
「自分が得意なことや楽しいこと、それをまずやってみましょう」ということです。
高柳:発表会も先生たちがすごく主体的でユニークな会になっていますもんね!
みんなで作り込んでいて、まさにみんなの劇場ですね。
時代とともに変化する保育園の「役割」
高柳:戸田さんは先生たちへも様々な学ぶ機会を取り入れていますよね?コーチングやアンガーマネージメントなど、先生たちも保育以外を学んでいく必要があるのですね。
戸田:一部の保育士は、年間60時間くらいの研修を受けることになったのです。
私自身も平均月2回くらい受けます、結構多いでしょう?
高柳:思ったよりも多いですね!保育にイベントに研修まで保育士さんって忙しいですね。
戸田:そこなんです。ほとんどの時間を子どもと過ごします。そのためか、大人同士のコミュニケーションが苦手な保育士も少なくありません。実際には子どもとのコミュニケーションだけではないのです。これには時代背景も大きく影響しています。
高柳:私も最初は「子どもと接する」に着目していました。でも 、保育士さんと話すと違いましたね。
保護者や先生同士、ときには地域の人とも、想像以上に幅の広いコミュニケーションの環境がありました。
戸田:20年ほど前まで保育園は、子どもを預かる児童福祉施設でした。
今では保護者や地域との関係構築も含めた総合的な役割が求められています。
高柳:子どもへ対するスキル以上のものが必要なのですね。
戸田:そうです、保護者の悩みをケアしたりね。極端に言えば、「保育園では明るく元気だけど、家は暗くてぼーっとするしかない」だったら子どもの育つ環境としてサポートが必要です。
高柳:それは行政からも求められているのですか?
戸田: はい、保育指針というものがあります。その中には「地域」も入っています。
核家族化の影響で地域のつながりが希薄になりました。高齢者や近所の人との付き合いですね。
そこで保育園がちょっと頑張って、「高齢者の方々との触れ合いの場や子育て相談会を開きましょう」ってことになっています。
高柳:最近の若い人は、気配りができないと言われます。
これは圧倒的にいろんな年代とコミュニケーション取る機会が減っていることも要因だと感じます。
社会に出る前に親以外の大人と話した経験が少ないとか。その役割が保育園へ求められているんでしょうね。
戸田:それもあると思います。今や保育士に必要な力は子どもと接することだけではありません。保護者や地域のさまざまな世代の人とコミュニケーションをとれる力が必要になっているのです。
高柳:保育園と保育士さんは子育てを通して地域の重要な立場になっているんですね!
Dコートでも社会人ゲストを招くようにしています。子どものころから、自分とは違う世代と関われる場があるって、今の時代はとても貴重ですね。
協調性と主体性を実現するために
高柳:戸田さんの保育園でも方針になっている「主体性」ですが、Dコートでも親御さんから求められるもののひとつとして認識しています。主体性ってどうすれば出てくるのだと思いますか?
戸田:まず主体性の弊害になる、逆の状態にならないことは大切です。
「受け身状態」とか「指示待ち状態」ですね。あとは今よく言われる「忖度(そんたく)」みたいな感じになるクセを付けないで欲しいです。
高柳:噂の「忖度」ですね(笑)相手の気持ちをおしはかるということなのかと思いますが、良くないですか?
戸田:相手を気づかうのは良いとして、その結果自分の意見が言えないのはいけないと思います。これは子どもとか保育士だけでなく仕事をする上で重要なことです。
高柳:互いに主体性を持てば、自分も相手も意見を出し議論ができます。
それが共通した目標や方向性をつくっていくのだと思います。違う人が加われば新たな意見で議論が発展する。これはDコートが目指すディスカッションの状態でもあります。
戸田:もう一つ重要なキーワードが「協調性」です。保育には協調性を育むことも指針にあります。
しかし、日本は文化的に協調性が行き過ぎる傾向があるんです。
高柳:確かに、日本人としての強みのひとつですが、協調しすぎると主体性は見えにくくなりますね。
協調と我慢の違いも難しいと感じます。
戸田:少し前の幼児教育では協調性が今よりも求められていました。クラスという集団では助かりますし、親も協調性をもって欲しいという願いも多かったかと。
高柳:確かに、保育園のような集団生活の中では必要な場面もありますね。
戸田:そうです。しかし、私はそれよりも主体性が先にあると考えます。先に協調性へ偏ると、顔色をうかがう状態になりがちです。まず主体性を持つ、そのあとの課題として出てくるのが協調性だと思うのです。
そのとき重要になるのがディスカッションの力!
ディスカッションは協調性を持ちつつ、実は「自分の意見を言ってもいいのだ」という主体性に気づく場にもなります。
高柳:ディスカッションには「共に創る」という気持ちが前提にあります。それが協調性と主体性を同時に実現する場になっているのかもしれませんね。
日本初!ディスカッションの教室「Dコート」
コミュニケーション力を総合的に育む教育プログラムです!
グローバル・政治・社会・哲学・自分・友だち、身近なことから社会のことまで幅広いテーマのディスカッションを通じて、豊かな視点や興味関心のアンテナを育みます!また、一人ひとりの個性を尊重し、「自分らしいコミュニケーション」を大切にしながら、総合的にコミュニケーション能力を高めることができます。これからの時代に必須のコミュニケーション能力をDコートで育てていきませんか?